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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1427号 判決

被告人

中島竹次

主文

被告人並に原審檢察官の本件控訴は何れも之を棄却する。

理由

弁護人香田廣一の控訴趣意第一点、第二点について。

しかし所論の如き事情があつたにせよ、裁判官は当然自ら当該事件の審判から回避しなければならないという明文上の根拠はないのみならず回避しないことが必ずしも法の精神に背反するものでもなく、又裁判官に予断を抱かせたものと疑うに足りる違法があるとも云えない、むしろ刑事訴訟規則第二百七条の設けられた趣意に鑑れば回避の必要を認めないものと解するのを至当とする。從つてこの点に関する論旨も亦採用に値しない。

(弁護人香田廣一の控訴趣意第二点)

原判決は裁判官が回避すべきにそれをしなかつた不法があると信ずる。

前点説示の樣に原判決はその手続の上に於て証拠とすることが出來ないものに対して証拠調を爲し然る後に該証拠の排除をして居る。然かも此の排除をした証拠は全部被告人の犯罪証明のために檢察官から提出したつまり被告人に対しては所謂不利益証拠のみであつたので裁判官は此の事件に対する被告人の不利益の点は一応了承したものと看做すべきことは言ふ迄もないと思ふ。それで例へ之を排除したと言つても既に其の証拠によつて与えられたところの予断は全然之を拂拭することは不可能である。刑事訴訟法の主眼とするところは言う迄もなく裁判官の予断完封と人権の保障にあるのであるから此の刑訴の精神からして須らく原審裁判官は本件裁判から回避すべきであるのに右証拠排除決定後も漫然として其の裁判に干与したことは法の精神に背反した不法があるので破毀を免れないものと信ずる。

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